言語の使用状況を見抜く
人工言語は言語の一種なので、通常実用を考慮します。 だからこそ多くの人工言語で音韻を決めているわけです。 喋ることが想定されないのなら音韻を決める必要はないですからね。
人工言語には色んな型があります。 小説などの中だけで完結する言語に音声の細かい設定がいるとは思えません。 文法研究のために作られた言語に音韻・音声・抑揚など決める必要もないでしょう。 でもそれ以外の言語は口語での実用が想定されています。
では実際に人工言語が音声言語として使われているかといえば疑問です。 エスペラント以外の人工言語は殆ど音声言語として使われてないのではないでしょうか。 また、音声以前に作者自身が生活の言語として自言語を使っているかさえ怪しいです。 普及型や符牒型の場合、最低でも作者が実用できなければなりません。説得力がないからです。
そこで普及型や符牒型と聞くと私は作者が自言語を使えるのかどうかを気にします。 作者が使えないのに普及も何もなかろうと思っているからです。 提唱者が喋れないのに普及などと言った場合、常識は作者の言動を悪いジョークと捉えます。 ただ残念なことに作者自身が明らかに使っていなそうなのが現状です。
*もちろん、固定の単語による口語を前提としない特殊な普及型(ref.地球語)は批判を免れます。 年若い普及型についても同様に批判を免れます。言語を作ってもそんなにすぐには実用できませんから。
さて、それでは使っていなそうなのをどう測るのでしょうか。 そんなもの作者に実演してもらうのが一番ですが、 それは飲み会で人工言語を披露しろと芸のように扱われた大学時代を思い出します。 あれは非常に不快だったので、人から目の前で披露しろと言われるのが不快であろうことは 容易に想像できます。 なので私はそういう無粋なことをしませんが、その代わり、コンテンツを見て作者の言語力を推測しています。
人工言語の作者は殆ど男性です。そして大抵のサイトは辞書を持っています。 どの作者も基本語彙から作ります。生活語彙は基本語彙と重複することが多いです。でもあくまで別物です。 男性が見落としがちな生活語彙は辞書から漏れがちです。 自言語を生活に使っていれば必要なはずの単語が辞書になかったりします。 こういうのを見て、私は「恐らくこの作者は自言語を実用していないだろう」と推し量ります。 あくまで推量の域を出ません。
では見落としがちな語彙とは何でしょうか。それは家事用語です。 最近でも一般に男性はあまり家事をしませんからね。 私はアルカで暫く生活していた人間なので、 「実用語彙リスト」的なものが何となく頭の中にイメージされています。
たとえば朝起きれば窓を開けるでしょ、ガラガラと。で、窓には鍵がありますよね。 あれを毎日開閉するのに、その語が登録されてないのは不自然です。 あの鍵は耳の形に似ているので、アルカでは耳鍵(temkoz)といいます。
それが無いのに不要な語が多いことも実用していないだろうことを示唆します。 たとえば日常的に見る動物など犬・猫・鳥・虫くらいのものではないでしょうか。 キツネとか人生に見たこと殆どないです。そんなものより冷蔵庫の中のもののネーミングをしたほうが良いです。 いつも食べてるものの単語が辞書にない以上、いかにも実用されてなさそうです。
あと男性の盲点はハンガーかな。毎日使うくせにハンガーって辞書にないこと多いですよね。 蛇口とかもないし……。なぜかこれらは高級語と扱われてるのかな。 他に盲点を突くと、掃除機のヘッドの部分でしょうか。女性でもないと気付きませんかね。 あれ、ほぼ毎日使うし取り替えるじゃないですか。あれが辞書にないのはいかにも生活臭がしません。 他にも風呂や流しの栓とか、換気扇とかね……色々ありますよ、家の中って。
ところで、英和辞典を見るとchalkが基本語彙になっています。 でも英英辞典を見るとchalkはどうでもいい扱いです。 学校で教える単語レベルは英和中心です。それをそのまま言語の作者が踏襲している気がします。 英和の影響を受けたせいで非日常的な単語ばかり寄せ集めている気がします。
まとめ
使用状況を見抜くには男性が見落としがちな生活語彙を見るのがいいです。但し推論の域は出ません。 また、こういったことが問題になるのは普及型と符牒型のような実用を前提とする言語です。
提案
これだけだと愚痴で終わるので、ポジティブに提案です。
- 英和辞典などの単語レベルを参照するのを止め、英英辞典などを参照して、 実用に即した単語レベルを決める。
- とりあえず自分の部屋を見て、あるものを名付ける。 終わったら家の中をぐるっとして日用品を全て名付ける。 このとき付箋に自言語で書いて貼っておくといいです。 マジックで書き込むのと併用すると水物にも耐えられます。 この方法は私が実践して、中々役立ちました。
- 自分の身の回りのことくらい自言語で言えるようにしておく。 でないと読者に対して説得力がないし、何より自分に自信が持てない。
- はじめに
- 新語の補充と普及
- 人工文化による警鐘
- 自文化の排他
- 人工文化な生活
- 普及型を作っている人へ
- 人工文化応用の実例
- 表意文字の思い出
- 辞書について覚書
- 最小対語の処理法
- 人工言語で感情を
- 孤軍奮闘の人工言語
- ピクトグラム
- 地名の付け方
- 人名について
- 語の音が卑語に似た場合
- 普及型の実情
- 人工言語で何ができるか
- 協力者の獲得
- 高級語の命名法
- 人工言語は簡単か
- 自然物以外の高級語
- 新生人工言語とアルカ
- ゼロから語彙を作るには
- 日本の人工言語
- 人工言語の天秤
- 文化なしでできること
- エスペラントとアルカ
- 学問の薦め
- 趣味としての人工言語
- 人工言語から見たアスペクト
- 言語の優劣
- 月刊「言語」2006年11月号レビュー
- 言語の使用状況を見抜く
- 人工言語普及論
- 人工言語と思想団体
- n対語の弁別性
