新生人工言語とアルカ
制アルカの目的は身内の仲を良くすることと、秘密の書字として使うことです。 排他的で孤立した言語を使うことで結託させようという狙いでした。
アシェットは色んな母語・母文化から成り立っています。 互いの文化を尊重していたらかえって何もできません。 何かしら共通の価値観を設けなければなりませんでした。 そこで生まれた概念が人工文化です。
順序を言うと、言語の次に生まれたのが文化です。 厳密にいうと早くからちゃんぽん文化は生まれていました。 ですがそれは所詮ちゃんぽんなので、地球上の文化を混ぜていったような折衷案的な、 しかもまとまりのない形でした。 そこで徐々にアンティスの独自性が叫ばれるようになり、 ようやくちゃんぽん文化を捨てるようになっていきました。
ですがここで問題がでました。独自の文化を創るのは難しいのです。文化は異文化の影響を受けます。 地球上のどこかにアンティスを存在させると、特定の文化の影響を受けて独自性を失ってしまいます。 それに私のように散り散りのメンバーもいるので、日本を舞台にしたりすることもできませんし。
そこで初めてアンティスは異世界という架空の世界に存在させることにしました。 アトラスの誕生です。これでアルカは2面性を持ちました。 私たちは地球に住んでアルカと使っているけれど、アルカが存在するのは架空の世界であるという2面性です。 突飛な案ですが、差異化するには最適で、 仲間意識向上には役立ちました(始めは実用可能か凄く不安でした)。
異世界を作るという時点で人工風土の概念ができました。 したがって、言語、文化、風土の順序で人工化されていったわけです。 人工でなく自然の場合、風土があり、そこに人が住み着いて文化ができ、 文化の一端として言語が生じる。 つまり風土、文化、言語の順なわけです。 人工の場合、順序が全く逆というのは面白いですね。
アルカに携わって思ったことは、共通の価値観が必要だなということです。 だからといって文化や風土まで創るのはやりすぎかもしれませんが、 沢山文化があると流石に共通の価値観が必要です。
ところで、新生人工言語では完全型と非完全型を提示していますが、アルカはどちらに属するのでしょう。 新生人工言語論を作るきっかけとなった言語なんだから生粋の完全型だと思われるでしょうが、 そうではありません。まず、完全型は容易には作れません。 文明が未発達の文化なら完全型でも作れますが、科学が発達していると作れません。
学術用語は恐ろしく多く、増える速度も速い。それを一々命名していく時間と人員はありません。 細かい自然物は命名しなくても生きてて問題ありませんが、 化学物や機械道具類は日用品の中に記載されているので命名せざるをえません。 しかしこれらは数が多すぎます。以前も述べましたが、 これに対しては体系的に命名できるような造語システムを作っておきます。
ところで、科学力の低い文化を作ると。現在の地球の先進国レベルについていけません。 なのでアルカは完全型ではありません。実用を考えると現在の地球の科学力は必要だからです。
アルカ本体は異世界にあるけど使用者は地球にいるので、 架空の世界のアルカと地球のアルカを別視する必要があります。 これがアルカの持つ2面性です。異世界のアルカが大元になっているけど、 地球版のアルカでは地球の科学を参考にした命名が行われる。 だから異世界のアルカにはない単語が地球のアルカには存在したりします。
アメリカや日本やフィンランドという国名は地球版にしかない単語で、 同じ音形の語が異世界版では全く別の意味を持つ語として使われたりします。 神話を語るときなどは異世界版で語るため、どちらの世界のアルカを話しているのかを 考慮しないかぎり同音異義語がいくつか生まれます。 こういうのは慣れの問題で、意外とすぐに適応できます。
閑話休題。全ての術語を命名するのは不可能なので、実際アルカは術語を作るときは地球の 科学を参考にして命名しています。 つまり、科学的にアポステリオリです。
もっとも、参考にしているだけなので完全にアポステリオリとも定義できません。 たとえば人工文化を極力適応してはいます。根拠もなく術語を直訳するようなことは避けています。
それでも完全型ではありません。実用言語だからです。 もし完全型を作りたいなら文明の高い社会は考えないほうが良いです。 協力者の人数にもよりますが、目安としては中世かそれ以前程度の文明なら作れると思います。 科学が乏しいし、コンピューターも化学も様々な機械類も日用品に溶け込んでいない。 この程度なら文化に即して作っていけるでしょう。中世に関する資料が十分にあればですが。
たとえば時代劇のような剣と魔法のファンタジー世界を作るような場合、 新生人工言語は完全型で機能するでしょう。 こういう世界は文明的に中世ヨーロッパをモチーフにしたものが多いですが、 この程度ならギリギリ作れるでしょう。
小説や漫画を細かく細かく作りこみたい人にはお勧めです。 後は独自の魔法理論などを言語や文化に組み込んでいけば、しっかり完全型が創れます。 ただ、時間はかなりかかると思います。
小説ではありませんが、私たちの神話は文明が低いころの話も作られています。 この辺りでは科学がまだないので、この時代に区切ってしまえばアルカも完全型といえるでしょう。 神話を小説というと罰が当たりそうですが、 仮にそういうならこの神話は完全型のファンタジーといえるかもしれません。
- はじめに
- 新語の補充と普及
- 人工文化による警鐘
- 自文化の排他
- 人工文化な生活
- 普及型を作っている人へ
- 人工文化応用の実例
- 表意文字の思い出
- 辞書について覚書
- 最小対語の処理法
- 人工言語で感情を
- 孤軍奮闘の人工言語
- ピクトグラム
- 地名の付け方
- 人名について
- 語の音が卑語に似た場合
- 普及型の実情
- 人工言語で何ができるか
- 協力者の獲得
- 高級語の命名法
- 人工言語は簡単か
- 自然物以外の高級語
- 新生人工言語とアルカ
- ゼロから語彙を作るには
- 日本の人工言語
- 人工言語の天秤
- 文化なしでできること
- エスペラントとアルカ
- 学問の薦め
- 趣味としての人工言語
- 人工言語から見たアスペクト
- 言語の優劣
- 月刊「言語」2006年11月号レビュー
- 言語の使用状況を見抜く
- 人工言語普及論
- 人工言語と思想団体
- n対語の弁別性
